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175.父が「頭蓋咽頭腫」で「コルサコフ症候群」になったように思うのですが

足立 憲昭 先生

文字化けのご連絡ありがとうございました。今度は、Nifty Serveで再度質問を送らせていただきます。

000でOOで質問いたします。

私の実父(75歳)についての質問です。

父は、昨年の8月00日に00000病院にて頭蓋咽頭腫の手術を受けました。

術後の経過は、意識レベルが良くなったり悪くなったりと動揺し、良いときにはリハビリを受けることができましたが、悪いときには昏睡ではないですが嗜眠状態となっておりました。

主治医のお話によると、術後から甲状腺ホルモンとヒドロコルチゾンの補充療法を行っていたとのことです。ADH分泌異常による高Na血症を呈しその治療も受けていました。意識レベルが低い状態が続いたため、9月00日にシャント手術を受けました。その後、徐々に回復し、家族や知人が誰であるかの認識が正確にできるようになり、リハビリもできるようになり、歩行もできるようになりました。

それまで父には、毎日母か私がつきそっておりましたが、11月に入って母が大腸癌の診断を受け、同病院で手術をすることになりましたので、父につきっきりの看護ができなくなりました。

その時点での父の状態は、失見当識と記憶障害がはなはだしいものの、歩くこと、識字、計算などはかなり正確にできていました。家族が付き添っていない時には、勝手に歩き回るおそれがあるので、リハビリの時間以外は、ベッドか椅子に抑制された状態になっており、夜間も睡導入剤などが投与されるようになりました。そのため、それまでわりと積極的に取り組んでいたリハビリもやる気がなくなったような様子があり、リハビリの先生からも、これは意識レベルが悪化したためではなく、催眠薬のcarry over effectであるといわれました。

主治医からは、母が退院するまで父が入院していることはかまわないと言われましたが、看護婦さんは、0000病院はどちらかというと急性期の治療にあたる病院であり、父のような症状の安定した患者に対して十分な看護はできないのでできれば退院したほうが良いとのお話しでした。

家族としましても、このような状態で父が入院しているのは、かえって父の状態を悪化させるような気がしましたので、退院を決心いたしました。退院するにあたって、父の脳腫瘍の治療は一応終了したかもしれないが、手術の後遺症としての痴呆症状については診察や治療をしていただいていないので、神経内科に転科するか他の適当な医療機関に紹介していただきたいとの希望を主治医にお話しましたが、父の痴呆は、アルツハイマー型や脳血管性のいわゆる老人性痴呆ではないので、自分の知っている範囲では、父の痴呆状態を治療するような医療施設は無く、もし私たちがそのような施設を見つけたならばいつでも紹介状を書くので知らせてほしいとのご返答でした。

その時は、母の手術も控えており、私もフルタイムで働いているため、母の不在の家に父一人で置いておくこともできなかったので、母が回復するまで、父は000 市に新しくできた老人保健施設に入所することになりました。現在、父はこの施設のクローズされた痴呆老人のフロアに入っています。毎日、会社の帰りに私が様子を見ていま すが、父の状態は、000病院にいたときよりはかなり改善しているように思います。一応、日常の活動は介助なしでできますし、社交辞令的な会話は正常にこなします。ただし、近時の記憶のretention timeは1−5分と短く、どうしてそのようなことを思い付くのかと思うような作り話が頻繁にでてきます。また、自分が今置かれている状況の把握も全くできていないようです。この施設では、何回か父を痴呆床ではないオープンのフロアに移すようにはからって頂いたようですが、その度に外に出ていこうとするのでクローズのフロアに戻されてしまいます。しかし、いわゆる徘徊とは違っているとのことでした。

母は昨年末に退院し、経過も順調ですので、父もできるだけ早く家にもどってきてもらうようにするつもりです。

先生にお尋ねしたいことは、000病院の主治医のおっしゃるように、本当に父のような患者を診察・治療していただける医療機関は無いのかということです。これは素人の考えかもしれませんが、原因は何であっても、実際に神経症状や精神的な障害が起こっているのですから、神経内科や精神科の治療対象になるのではないでしょうか。私は、現在薬剤師として医薬品関連の出版社に勤務しておりますので、そこでMedlineなどの検索をしてみますと、父の症状がアルコール中毒などでよく見られるコルサコフ症候群によくあてはまるように思えます。文献を取り寄せてみますと、著者は神経内科や精神科の所属となっており、この領域の医療機関で父の治療の可能性があるのではないかとも思います。

とにかく、検査で腫瘍が発見されたのですが、手術前の父は全く正常であり、手術によって痴呆状態になり、脳外科ではできることは全てしたので、あとは家族で介護するようにといわれても、家族としてはその覚悟も知識も十分でなく、納得できないものがあります。しかるべき医療機関で、診察を受け、治療できるならしていただき、家族にも介護の指導などをしていただきたいと思っております。

父の腫瘍は難しい場所にあったために全摘できませんでしたので、今後定期的に000病院で検査を受け、再発した場合にはガンマナイフの治療を受けることになるかもしれませんが、痴呆に関する医療は期待できないように思います。父の住まいは、000市ですのでできれば通院可能な医療機関をご紹介いただきたく思っております。よろしくご回答をお願い致します。

前回の内容より詳細になってしまいました。ご面倒をおかけいたしますがよろしくお願いいたします。

1998年1月3日

(98/01/03 13:03 兵庫県 Uさん)


(97/12/21)

お父様のご病気全く予想もしない考えられたこともない病状の経過とその対応にに戸惑われておられるご様子ご心痛お察し申し上げます。

ご質問者は医師ではありませんがご自分で「コルサコフ症候群」と診断をされています。文面からは正しい診断ではないかと考えられます。

「コルサコフ症候群」につきましては私のホームページの医学部学生さん用のページの中ではビタミンB1(サイアミン)欠乏症の症状として解説しておきましたが記銘力障害、健忘、失見当識、作話の4つの大きな症状が特徴です。

「記銘力障害」とは新しい電話番号など新たに何かを記憶する力が無くなることです。「健忘」とはある事柄に付いて思い出せないこと、「失見当識」とは場所、時間、人がわからなくなることで自分が今いる「いまどこにいるか(病院など)」、「今日が何月何日か」、「今一日のうち何時ごろか」、「お見舞いに来てくれた娘が誰か」などが見当がつかなくなる状態です。「作話」は意図的ではなく知らず知らずのうちに文字どおりつくり話をしてしまうことです。

「コルサコフ症候群」は慢性アルコール中毒だけでなく種々の脳炎(日本脳炎やヘルペス脳炎など)、頭の大怪我、脳腫瘍、ビタミンB1欠乏などいろいろな原因で起こってきます。で、「コルサコフ症候群」とは病気の原因の名前ではなく症状の集まりを纏めて呼んだ名前です。こういう状態になるしくみとしては頭の中の海馬、乳頭体、視床、帯状回などというところの障害と考えられています。

「頭蓋咽頭腫」という脳腫瘍でもよくみられる症状です。

何度も申し上げますように「コルサコフ症候群」というのは病気の名前ではなくて結果としての状態を表す言葉です。ですから「コルサコフ症候群」特有の原因治療法というものはなくそれぞれ原因になっている病気を治療することが根本的な治療となるわけです。神経内科の先生はこういうことが専門ですのでしっかりとした診断名を下して頂けますが脳外科の先生方の中にはこういう治療に直接役立たない診断名を云々することにはあまり関心が少なく患者さんやご家族の方々にもはっきりとはお話にならない方もいらっしゃいます。

神経内科の先生に診てもらうと「コルサコフ症候群」の診断は正確にして下さるかもしれませんが、かといって神経内科の先生に診てもらったから「コルサコフ症候群」に対する特効的な治療法があるわけではありません。原因となった病気(ご質問者の場合は「頭蓋咽頭腫」)の治療をそれぞれの専門(「頭蓋咽頭腫」の場合脳外科)の先生にしっかり治療をして頂いた上であとは適切な療養環境と根気良いリハビリテーションとが重要です。

一般にこういった痴呆症状があると一般病院や施設では対応が難しく入所を煙たがられる傾向がありかといって精神病院では必要の無い人まで閉鎖病棟で鍵をかけられるようなところに詰め込まれてリハビリどころか衛生状態までも心配なところも多いです。たとえ良いところがあったとしても他府県など随分と離れたところで何ヶ月待ち、何年待ちだったり、たとえ入院ができても長期入院は良いこととされないところが多いです。

ご質問者の場合のように、出来るだけオープンのところに移そうとして下さるような良心的な良いところが同じ市内にあるのはよほどの幸運なことというのが実感です。

ご質問者は私の現在勤務中の病院に近いですので具体的な病院についてのパンフレットなどを持っていたりするところも多いですがぴったりという病院、施設は今のところ思い浮かびません。オープンフロアでも大丈夫な状態にまで症状が治まった時点では私が院長をしていた有馬温泉病院など言語療法、リハビリがとても素晴らしい良心的な病院をご紹介できるかもしれません。ご期待に添えないところがほとんどでしょうがどうしてもとの場合は再度ご連絡下さい。


(98/ 1/ 5 00:16)

足立先生 とても早いご返事ありがとうございました。

先生にご相談したことで自分の不運ばかりに向いていた気持ちが少し楽になったような気がします。

近所の良心的な施設にタイミング良く入所できたことにも感謝しなければなりませんね。父がもう少し回復したらリハビリの施設など探すことになると思いますがその時にはまたご相談するかもしれません。よろしくお願い致します。


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